Syrup16g「Hurt」~傷ついても、生きていくという選択~


Syrup16g「Hurt」(2014)

僕が学生時代に最も聴いたバンドがついに再結成。そう、Syrup16gのことである。
再結成した彼らのNewアルバムは「Hurt」というタイトル。
「心」、「傷つける」、どう捉えるにしても軽い単語ではない。
そして、このアルバムはSyrup16g解散後の五十嵐さんの日記だ。
傷ついた人間が、傷ついてでも音楽を続けていくまでの過程が生々しいほど描かれている。


荒々しいギターリフからリズム隊が絡みあうハードナンバー「Share the light」
Syrup16g解散後に起こった「東日本大震災」。この未曽有の大災害の中で、多くの人が助けあった。
あえて、「シェア」という単語を使ったのは、五十嵐さんなりの震災に対するメッセージだと思う。
光を与えるだけがアーティストの仕事じゃない、光も痛みも共有することが必要だと。

掻き鳴らすギターに切ないメロディが乗っかる「イカれた HOLIDAYS」

「価値残れない 現実の先に 衰弱していく 精神の果てに 夢を見ていた」

五十嵐さんらしい言葉遊びと、弱っていく自らの「心」が描かれた歌詞。
どんな夢を見ていたのかが、気になる所。

キタダさんのベースラインがメロディアスな「Stop brain」
このアルバムで一番好きな曲かもしれない。ディレイがかかったギターサウンドはこれぞSyrup16g。

「Stop brain 思考停止が唯一の希望」

明らかに希望じゃないものを希望と歌ってしまうのが五十嵐節。
このフレーズを聴いただけで、Syrup16gが本当に戻って来た事を実感できる。

クラシックなギターフレーズから始まり、加速していく「ゆびきりをしたのは」

「勇気を使いたいんだろ」

このフレーズの繰り返しがやたら耳に残る。
「人生楽しくない」と断言しちゃったよ。いままでのアルバム聴いてたから、薄々気づいていたけれども。

曲名通り、全くダンス感の無い気だるいナンバー「(You will) never dance tonight」
少しテンポの落としたナンバー。しかし、サウンドは力強い。
特に中畑さんのドラムがどっしりとした安定感。

「Mouth to Mouse」収録の「実弾」に似たギターの刻みが特徴の「哀しき Shoegaze」
間奏後の転調に思わずニヤリとしてしまう。
五十嵐さんのギターが上手くなったと思うのは僕だけだろうか?
単音フレーズ演奏時の不安定感が以前より感じなくなった。

ダンサンブルなリフで体が揺れる「メビウスゲート」

「問題ないことだって わりかし問題だから」

問題がないということは、それ以上は望めないということだからなあ。
問題を見つけられる才能は、社会的にもっと評価される必要があるのでは。

PVも公開されている、このアルバムのリード曲「生きているよりマシさ」
キャッチーなメロディと、このアルバムを象徴するような、解散後の五十嵐さんの生活を窺える歌詞。

「波を立てずに 穏やかな暮らしで 目立たないように 慎ましやかにして」

一見、穏やかな暮らしに見えるが次のフレーズでは、

「死んでいる方が マシさ 生きているより マシさ」

と続く。静かな暮らしを望んでいたはずだが、実際にそうなると「死んだように生きている」状態になってしまった。
だからこそ、表舞台に戻る必要があった。彼には音楽しか残っていないのだから。

ポップなミドルテンポの美メロナンバー「理想的なスピードで」
前作「Syrup16g」に収録されていてもおかしくないような曲調のナンバー。
しかし、前作にあったような過度なアレンジはなく、スリーピースバンドのシンプルなアレンジ。

「安心だけはしない 死ぬまで」

以前から歌ってきた、完成することへの違和感。やはり、五十嵐さんは変わっていない。
安心した。

アラビア風のギターイントロに導かれるアップテンポの「宇宙遊泳」

「次のステージが Destination ブッ飛んだ景色の」

何かを振り切ったように勢いのあるバンドサウンドと前を向いた歌詞。
Syrup16gはこれからどんな景色を見せてくれるのだろうか、楽しみです。

ラストはこのアルバムでも際立ってポップな「旅立ちの歌」
旅立ちの曲だけど、決して悲壮感はない。

「最低の中で 最高は輝く」

最後にキラーフレーズを持ってきた。
今後も彼らが曲を作り続けてくれると確信した。


一聴して感じたのは「バンド感」の復活。
前作「Syrup16g」では過度なアレンジでスリーピースバンドとしての魅力が損なわれていたけれども、
今作は徹底的にバンドサウンドにこだわった作りとなっている。
最近のバンドでは少ない、ディレイを常用したギターサウンドはこれぞSyrup16g。
ライブに行くのが楽しみになる作品。(残念ながら、僕は東名阪ツアーに参加できないけれど・・・)

また、歌詞は五十嵐さんの解散後の生活が色濃く反映されている。
実際にどういう生活をしていたのか、聴き手は知ることはできないけれども、
曲を聴いていれば、勝手に想像が出来てしまう。
以前のような社会に対して毒づくような強いフレーズはないが、
五十嵐さんらしい独特の表現で、パーソナルな感情を曝け出している。

やはり、このバンドは特別だ。アルバムを聴いて、感情が揺さぶられるバンドは少ない。
特別なバンドだからこそ、求めてしまう部分があるわけで、
今作は一聴しただけで耳に引っ掛かるようなキラーチューンはない。
以前だったら、一つのアルバムに2、3曲はそういう曲があったけど、今作は何度も聴いて良さが出る曲が大半。
ここら辺は6年間のブランクを感じてしまうところ。

雑誌のインタビューでこれからもどんどん曲は作っていくと言っていた五十嵐さん。
この人が作る音楽をこれじからも聴けるというのは、本当にうれしい。
音楽を続ければ、以前のように傷つくことが起きるかもしれないけど、
それでもバンドを続けるという選択をした彼ら。
これからも、聴き手の心に刺さるような音楽を期待しています。

評価:A

① Share the light
② イカれた HOLIDAYS
③ Stop brain
④ ゆびきりをしたのは
⑤ (You will) never dance tonight
⑥ 哀しき Shoegaze
⑦ メビウスゲート
⑧ 生きているよりマシさ
⑨ 理想的なスピードで
⑩ 宇宙遊泳
⑪ 旅立ちの歌



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テーマ : 男性アーティスト
ジャンル : 音楽

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S.S

Author:S.S
1990年生まれ。愛知県出身。東京都在住。
音楽に生かされている人間です。
どれだけ続くかわかりませんが、邦楽のアルバムレビューをしていきます。

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