Syrup16g「coup d'Etat」~生ぬるい自分自身へクーデターを~


Syrup16gcoup d'Etat」(2002)

Syrup16gのメジャーデビューアルバム「coup d'Etat」(2010年に再発、今回のレビューは2002年に発売のもの)
インディーズ時代に発売された「COPY」も名盤だったが、この作品はさらに上回って来た。
ボーカルの五十嵐さんが自分自身に対して「クーデター」を起こすという意図で作られたこの作品。
超攻撃型のSyrup16gがここにある。


不穏なギターフレーズでリスナーを引きずり込む「My Love’s Sold」

「一応臨戦状態です」

だるそうに歌う五十嵐さん。メジャーデビューに当たり、音楽を切り売りする自分自身に戦いを挑む。
後半に行くにつれ、迫力を増すバンドサウンドに圧倒される。

ファンにはお馴染み、各楽器が絡み合う人気曲「神のカルマ」

「進化 調和 交友 反映 ああそう HELLO あんた 嫌い」

冒頭のこのフレーズから独特の五十嵐節が炸裂。
「ああそう HELLO」の部分が、元総理大臣の名前に聞こえるのは僕だけでしょうか?
メロディアスなベースラインが印象的。当時のベース佐藤さんはレコーディングに苦労したそうだ。

曲名とは反対に生命力をまるで感じない「生きたいよ」
後ろ向きでもいいんじゃない、生きてさえいれば。
「ノスタルジー」を「生ゴミ」と言っちゃうところが流石です。

挑発的な歌詞が繰り出される「手首」

「くだらない事 言ってないで 早く働けよ 無駄にいいもんばかり食わされて 腹出てるぜ」

ニートやフリータ―に喧嘩売ってますね。五十嵐さん自身に歌っているんだろうけど。

心が浄化されていくようなスローバラード「遊体離脱」
曲名通り、「幽体離脱」して俯瞰的に自分自身を見ているような歌詞が印象的。
このアルバムは5の倍数曲にスローバラードが収録されており、アクセントとなっている。

前半戦の終わりを告げるインスト曲「virgin suicide」
曲名が中々怖いです。そして、この後、怒涛の後半戦が始まる。

イントロのミュートプレイが格好良すぎる代表曲「天才」

「どこで曲がったら良かった? どこで間違えた? 教えてよ」

こんな後悔の繰り返しだよ、人生なんて。そうじゃない?
このアルバムを象徴するような攻撃的なナンバー。

このアルバムの中ではキャッチーなサウンド「ソドシラソ」
歌詞のやる気の無さが半端じゃない。

「行く場所なんて別にねえ 今さら何もする気ねえ 生きてるなんて感じねえぜ しねえ」

ここまで無気力な自分を曝け出して歌えるものなのか。

主旋律とは別に、全く別の歌が聞こえるという面白い構成の「バリで死す」
五十嵐さんは浪人中にバリ島に行き、現地の民族音楽に衝撃を受けたそうだ。

「全人類兄弟 けんちん汁ちょうだい」

突拍子なくこんなフレーズが出てくるのが、このバンドの凄さかもしれない。

悲しいメロディとサビの裏声が圧巻の「ハピネス」

「ねぇ そんな普通を みんな耐えてるんだ ねぇ そんな苦痛を みんな耐えてるんだ」

自分だけじゃない、みんなが耐えているからこそ、「普通」な世界が成立する。
誰かの犠牲が積み重なり、成り立つ社会。こんなんでいいのか?

次曲とセットで、ライブでも演奏されることが多い「coup d'Etat」
わずか30秒で狂気を生み出す。

ざらついたギターストロークと歌うベースラインが印象的な「空をなくす」

「悲しい性です 「もっと上へ」だって 上なんて何も無いけど」

頂点を目指した先には何が待っているんだろう?
何も無いのだろうか? だとしたら、そこまでの過程に大きな意味があるということか。
「天才」と並ぶ、このアルバあおんムを代表するロックナンバー。

浮遊感あるミドルテンポのナンバー「汚れたいだけ」

「小学5年から 人生なめくさってんだ」

早くないですか・・・。
どうしようもなく重い。ラストまで、絶望を歌い続けた。


絶望的で、挑発的で、やるせない歌詞の全ては五十嵐さんが自分自身に向けて歌ったもの。
身を削り造られた音楽。まさに「破滅の美学」がこのアルバムから感じ取れる。
サウンド面も基本的には重い。だが、耳に残る。この奇妙なキャッチーさはなんだろう?
ただ、暗いことを歌うだけだったら、受け入れられなかったはず。
暗くて、ポップ。このトレードオフを両立させたからこそ、Syrup16gは唯一無二の存在となった。

メジャー1stフルアルバムで、これほど挑戦的な作品を発売する。売る気なんてさらさらないですね。
圧倒的な詞の世界観とハイクオリティな楽曲達。文句なしの名盤。
聴くのには、勇気のいるアルバムかもしれない。それだけ中毒性がある。
ただ、聴けば何かしらの感情が芽生えることは間違いない。
まさに、聴き手の心に「クーデター」を起こす。2000年代を代表する傑作。

評価:S

① My Love’s Sold
② 神のカルマ
③ 生きたいよ
④ 手首
⑤ 遊体離脱
⑥ virgin suicide
⑦ 天才
⑧ ソドシラソ
⑨ バリで死す
⑩ ハピネス
⑪ coup d’Etat
⑫ 空をなくす
⑬ 汚れたいだけ



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ジャンル : 音楽

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S.S

Author:S.S
1990年生まれ。愛知県出身。東京都在住。
音楽に生かされている人間です。
どれだけ続くかわかりませんが、邦楽のアルバムレビューをしていきます。

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